夢、根の国より

おかしな夢を見た。

あたしは北ノ庄でなぜ火の中に身を投じたのだったろうか。この雪深い地に深い想いがあるわけではない。権六は誠実な人ではあるけれど、魅かれたことはない。清洲でのあの日も権六はただそこにいただけだったような。

あの猿は憎かった。兄さまの世を奪おうとしている。あたしの子は猿のせいで殺された。しかも私の娘を変な目で見ているのは何のつもりか。見渡してみると、誰も彼もが小粒に見える。堀はよくやってくれている。ただ、誰につくかわからない危うさがある。利家は案外と大きな人になるかもしれない。佐々はよくわからない。丹羽と池田は何もしないままだろう。後世の人は存外、忘れているかもしれない。徳川は律義者に見える。彼の御仁に限って、まさか盗人の如きことをするはずもない。

金ヶ崎ではあたしは長政様を裏切った。兄さまのほうが大切だったから。あの北ノ荘の炎とともに、怨みも哀しみも全て消えた。

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