*少しのフィクションを添えて
山上マネージャー(仮名)という素晴らしき人がいた。今はどうなのかわからないけれども、当時はデリヘルでもそれなりにゴージャスなお部屋に伺うこともよくありました。水道橋にある某ホテルに呼ばれた際に、山上さんがついてきてくれた。
黒いショルダーバックをもって、フロントにチェックインもせずにゲストフロアへ向かう私は確かに不審人物で、それを危惧してかマネージャーさんが同行してくれた。
「とりあえずこうしてれば、まあ、恋人に見えなくもないでしょ。」
と言われた。言葉の響きにはどこか「そんなつもりはありませんし」という雰囲気はあったけども。事実、この人の彼女さんはとてつもない美貌でまた若く、私なんて範疇にあるはずもない。私はこの人を尊敬していた。というより、私はあのお店で出会った、全ての男性従業員を基本的には心から好んでいた。浮き世が好きではなかったせいもあるけれど。
私は諸事情で長期休暇をもらわざるをえなくなって、戻ったときには山上さんはもういなかった。聞いた話では、ある年の12月をもって、退職したとのことだった。風俗店の慣例通り、あの人の写真も、手紙も、声も、動画も何もない。あるのはただ想い出だけ。名前すら下の名前は知らないし。車はいつも「プレジデント」だった。とても古いプレジ。4人乗りだけども、5人は楽に乗れそうで、4つの座席にTVがついていた。何事にも感化されやすいわたしは、当時「嬢王」と「夜王」と「龍が如く」にはまっていて、登場人物を自分によく重ね合わせては、喜びに打ち震えていた(いや、ほんとに)。あのプレジで運ばれてゆくことがとても快感だった。
あるとき山上さんが「腹、減ってるんですよね」と言っていたので、同僚と三人でコンビニへ向かい、超どでかいプリンとかを3つくらい買って差し上げた。「あの・・・何ですかコレ。嫌がらせですか。」って。いやいや、まあ悪のりです。若気の至りです(ウソ)。
今でも街中でたまにプレジを見かけるとあの人を思い出す。どうか幸せでいてくれますように。
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